« 今日はケイト様。 | トップページ | 『プレステージ』DVD発売決定。 »

2007年10月14日 (日)

パンズ・ラビリンス

今日見てまいりましたが、
蓋を開けてみると、最後にすっと泣かされただけで済みました(^^;)。
以下ネタばれ全開の感想ですので白文字にします。
これから見られる方はできるだけ見たあとにご覧ください。



フランコ政権軍に恐怖と銃で支配される現実の物語と、
少女が妖精に導かれ
かつて王女だったという地下の王国に戻るための試練を受ける物語が
合わせ鏡のように同時進行で語られます。
おとぎ話と呼ばれるものの多くが
過酷な現実の物語を寓話化したものといわれますが、
これほど現実とリンクして同時に見事に語られる物語を見たのも初めてでした。
恐怖政治、ファシズム下で人の心を持ち続ける勇気。
少女が王女その人であることを確かめるために
課せられた試練もまた
人として(この場合は王女として)真の勇気と
誠の心を持ち合わせているかを試されるものでした。
恐怖に立ち向かう人々と少女自身の心の尊さが
つまるところ、この物語の核だったのだろうと思います。

予習が功を奏しまして
ずんとショックを喰らうことなく見られましたが、
(いきなり農民親子が理不尽に殺害されるシーンとか
拷問シーンとかでかい虫がうようよべたべたシーンとか
あっちこっち眼をつぶってやり過ごしはしました。
残虐度は『ブラッド・ダイヤモンド』や『トウモロー・ワールド』並みでしょうか。
『麦の穂を揺らす風』も入っています。)
無駄のない見事な構成でした。
それにPJといい勝負・・・と思うほどの凝り様。
2時間に収めた物語の織りの緻密さは美しくさえありました。
遊び部分といいますか、
パンやペイルマン(サトゥルヌスのようでした)、
妖精たちの細かい動きも全力投球で
たいへん見ごたえがありました。
ただパンがあんなにオーバーアクトだとは思わず
ちょっと拍子抜けしました。
エントの突然変異みたいで・・・。

三つの試練を無事クリアすれば
かつて王女として住んでいた地下の王国に戻れると聞かされ、
少女オフェリアはそれに立ち向かうことにします。
一つ目の試練は
巨木を弱らせているという巨大カエルに魔法の石を飲ませて
木を救うとともに、
カエルが飲み込んでいる鍵を手に入れること。
二つ目は、
砂時計の砂が落ちきる前にある場所に行き、
妖精の指示に従うこと。
ただし、そこの食べ物飲み物に一切手をつけては駄目。
そして三つ目は・・・。
おとぎ話ならこの答えで正解だ、とは思ったのですが、
二つ目の試練に失敗したオフェリアに(配給制でお腹が空いていたのか?)
「見捨てる宣言」をしておいて、
いきなり撤回したと思ったらこれかい!
初めから生きて王国に帰れることなんかなかったんじゃないの!!
・・・と突っ込みたくなった部分も多々あったんですが、
「試練」にゲーム感覚があまりなく
きわめて古典的なものだったのは良かったです。
すぐさまNO!と言い切った彼女はやはり王女様だったということで。

自分と自分の後継となる息子(つまり自分の分身)のことしか眼中になく
身重の妻に旅を強いて弱らせ、
挙句は妻も娘も簡単に切捨ててしまう大尉の悪魔っぷりを見ていると、
パンは善意の塊に見えるほどです。(まあ元々悪党ではないですが。)
そんな大尉との再婚をおそらくよかれと思って決めた母。
その母を助けようと、お腹の弟に話しかけ、
マンドラゴラを置いたオフェリアに向かって「現実の厳しさ」を諭すのだが、
本当に諭されるべきなのはどちらなのか。
ただ一人オフェリアを可愛がってくれた
大尉付きの小間使いのメルセデスは
ゲリラと通じているのを知られて逃亡したあとに
オフェリアを助けに戻ってくるけれど、
彼女は「最後のチャンス」を与えられて、
迷宮に向かったあとでした・・・。
最後のシーンの彼女の白さと明るい暖かい光に包まれた王宮が
切なく感じられてなりませんでした。



色々な要素が寓話のように、
また見る人によって捉える角度を変えられる万華鏡のように
織り上げられた秀作だと思います。
見る前にちょっとだけ心の準備をしていくか、
先入観なしにどかんと作品にやられてくるか、
心の元気度で決められるかとよろしいかと思います(^^)。


【追記】

お話のラストのところで、
何かに似てるなとひっかかっていたのですが
(いくつか似ているお話はあると思うのですが)、
やっと思い出したのは『北風のうしろの国』でした。ちょっとすっきり。
このお話は最後の一行で何度でも泣けます;;。
ダイヤモンド坊やはそれでもこがれた北風の元に行けたのですが、
オフェリアはただ現実から逃げ出したいだけだったのなら
なお切なさが増します。
それでも映画のラストが『北風・・・』の物語以上に
一種のハッピーエンドだと感じるのは何故なのでしょうか。

|

« 今日はケイト様。 | トップページ | 『プレステージ』DVD発売決定。 »

映画感想」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 今日はケイト様。 | トップページ | 『プレステージ』DVD発売決定。 »