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2007年1月 7日 (日)

麦の穂をゆらす風

朝起きてみると一面の銀世界でしたが、
その後お陽さまが出てきて10センチほどの雪はすっかり解けました。
このまま寒波が通り過ぎてくれると良いのですが。
そのおかげか、小さな映画館はたいへん賑わっていました。

物語の舞台は1920年、英国に支配されているアイルランド。
(劇中の台詞によると)議会は独立を認めているにもかかわらず、
イギリス政府がその決議を握りつぶして
武力による不当な支配を続けている状態。
物語の始めから、理不尽な命令に従わされ蹂躙される場面が描かれます。
英兵(武装警察)たちは気の向くまま、女子供の別なく暴力をふるい、
英語の名前を名乗らない「反抗的な」少年をその場で殺害して去っていく。
医師の若者デミアンはロンドン行きの列車に乗るところで、
兵士と武器は乗せないという規則を英兵たちに説明して
袋叩きにされた駅員と運転手に遭遇し、
兄の率いる祖国の独立を求める共和軍に参加することとなる。
・・・
(以下あらすじにあたるところを白文字にします。)

現在に至るまで休戦と紛争を繰り返しているIRAの起こりが
とても判り易く語られているなあと思いながら見ていました。
普段は一方的なニュースの切れ端くらいしか耳にする機会がないので、
これだけでも価値がありました。
テロではなくゲリラ戦というべきですね。

共和軍は一丸となって武器を取り、英軍を追い出すことに成功するのですが、
勝ち取ったはずの講和条約に「英国王帰属」の文言が入っていることから、
妥協して支持する自由国軍と真の自由を求めるグループとに分かれて対立し、
同胞同士で泥沼の内戦に入っていきます。
一度血が流されたあとは、共闘した仲間、肉親にさえ、
互いの言葉を聞くこともなく冷徹に引き金を引いてしまえる。
かつて匿い保護してくれた女性に英兵のような暴挙に出る恩知らずにさえなってしまう。
結局、英軍でもアイルランド自由国軍でも、やっていることが全く同じなのです。
資金を得るために一部の金持ちを擁護し、法を曲げ庶民を見捨ててもかまわない。
かつて仲間の名前を言わせようとする英兵の拷問に耐えた兄が
同じように弟に仲間と銃の所在を問い、
かつて英軍に情報を流した幼なじみを弟は泣きながら撃ち殺したが、
兄も同じように涙ながらに弟を銃殺する号令をかけるのだ。

(英軍に加わっていた同胞兵士のように弟を逃がしてやればいいのに、それ以下じゃないかと・・・。)

他人を奴隷のように扱うやからに抵抗することは、
まぎれもなく勇気のいる行為でかつ必要なことなのだけど、
銃がなければ暴力に対抗できない、といっていた兄が、
自由国軍の立場になると、
今度は対抗するグループを制圧するために銃を取り上げようとします。
某国は敵対関係をうまく作って漁夫の利を得る上手な「支配」をすると
歴史の時間に習った記憶がありますが、そういうことだったのでしょうか。

銃に「支配された」人間には
もはや平和は築けないような気がしてなりませんでした。
他人の痛みや思いを感じることができなくなっている(もしくは無視する)わけで、
もう人間としては駄目なんだろうなと。
そして映画を見ながら、
かつて同じような行為(文化の強要など)がこの国でも
少数民族や他国民に向けてもまぎれもなく行われていたこと、
今でも世界のどこかで行われ続けていることを思わずにはいられず、
暗澹たる気持ちになったのでした。
弱いものいじめがいつの世も横行するのも根っこはおそらく同じです。
心強く感じたのは、共和国裁判所のリリーら女性たちや、
英兵に家を焼かれたおばちゃんの台詞でした。
叩かれても叩かれても黙りません。
「あたしはここを動かないよ。鶏小屋を掃除すれば大丈夫。」
本当に、理不尽すぎます。

秀才君のデミアンを演じたキリアン・マーフィーは素晴らしかったです。
(舞台となったコーク出身なのだそうです。)
医師であるのに人を撃ち、心が何も感じなくなったとつぶやく彼。
聡明で物事をみる目を持ち、誠実であったから、
理不尽な状況の中では生きのびることができなかったのですが、
最後には自分の信念をつかみ、その生を生き切っていました。

「プルート」を見逃したのでスケアクロウしか見ていないのですが;;、
今後も要チェックの俳優さんです。

懐深く仲間の信頼も厚かったのに変節せざるを得なかった(?)
兄テディを演じるポードリック・ディレーニー、
それにダンを演じるリーアム・カニンガムもとてもよかったです。

切ないけれど、見てよかったと思う作品でした。

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